今年の夏もキミを想う…。
宮崎は、家から一度彼女に視線を移して、それからまた家に視線を戻す。
小さな村だから、そこに暮らす人々は当然のように皆顔見知りだったけれど、やっぱり宮崎にとってはどの人もただの他人で、その家に住んでいたおばあさんも、顔を合わせれば挨拶くらいはする程度の仲でしかなかった。
だからなのか、まるで家族が死んでしまったように辛そうな顔をしている彼女ほど、その死に特別心が痛むことはない。
「この家の息子さんね、先月だったかな……二人目が生まれたんだって」
唐突に話題を変えて、彼女がこちらに顔を向ける。
寂しげな表情が一転して、そこには明るい笑顔が戻っていた。
「ひとつの命が終わりを迎えて、今度は別の命が始まりを迎える。考えてみたら、何だかとっても不思議なことよね。今、私達がこうしている間にも、どこかで終わりを迎える人がいれば、また別のどこかで始まりを迎えている人がいるんだから」
「悲しいばかりじゃ、生きていくのが辛いものね。楽しいこともなくちゃ」と続けた彼女が、止めていた足を踏み出して歩き出す。