今年の夏もキミを想う…。


「ところでさ、なんで山?美術の宿題なら、家から見える景色でも適当に描いとけばいいんじゃないのか」

「それだと、あんまりいい評価もらえないんだって。ほら、みんな似たような絵になっちゃうから」

「なるほど」


緩い上り坂になっている道は、生い茂る木々が日陰を作ってくれていて、奥に進んでいくほどに若干の涼しさが感じられる。

それでも、自転車を押して歩く宮崎の額には、薄らと汗が滲んでいた。


「ここもう少し行ったら、木がガバっと開けてかなり見晴らしが良くなってる場所があるんだって。今日みたいに天気がいい日は、そこから町が見えるらしい」

「高知先輩の穴場か?」

「当たり」


緩やかだった上りが徐々にきつくなり、宮崎の息も段々と切れてくる。

それでも一心に自転車を押しながらのぼり続けて、額から流れ落ちた汗を袖口で拭った時、ようやくゴールが見えた。

先程まで、嫌になるほど眩しくて、尋常ではない熱気を放っていた夏の太陽。

しかしその光が、そこには枝葉を通して柔らかく降り注いでいる。
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