今年の夏もキミを想う…。
頭上には日陰を作るように大きく広がっている枝が、目の前の景色は決して邪魔しないように開けている。
木と木の間に見える景色に目を奪われながら、宮崎は弾んだ呼吸を整えた。
「ほんと、宮崎は軟弱になったね」
「うるさい」
息切れする宮崎を小馬鹿にしたように笑って、和果子は凹んだカゴからオレンジジュースの缶を二本取り出すと、地面に敷いたレジャーシートの上にぺったりと座り込んで、スケッチブックを広げている柚花の元に駆けて行った。
声をかけられて振り返り、差し出されたオレンジジュースに恐縮したように何度も頭を下げる柚花は、後ろからゆったりと自転車を押してくる宮崎に気がついて、また何度も頭を下げる。
「それ、俺からの差し入れ。どう、宿題は進んでる?」
照れたように笑ってみせる柚花が、別段隠そうともしなかったので、宮崎は上からスケッチブックを覗き込む。
鉛筆でラフにスケッチされた風景画は、素人目に見ても、中々の出来栄えだった。