今年の夏もキミを想う…。
鉛筆でのスケッチを終えて、柚花が色付けの為に絵の具セットを広げ始めたのが昼食時。
その頃、じゃんけんで負けた和果子は、宮崎の自転車を使って昼食を調達しに行き、宮崎は、手際よく色を作っていく柚花を後ろからぼんやりと眺めていた。
「柚花ちゃんはさ、美術部?」
「いえ……バトミントン部です」
「バトミントン?そんなのうちの中学にあったっけ……」
昔の記憶を引っ張り出そうとして眉間に皺を寄せた宮崎に、絵筆を持ったままの柚花が振り返る。
「前は、なかったです。新しく赴任してきた先生が作ったんですけど……部員は、わたしを入れて三人だけです」
どうやら、とっても熱意のある教師らしく、自分の車に部員と荷物を乗せて隣の町まで合宿に行ったり、練習試合も積極的に申し込んでは、どんな遠方でも部員達の送迎は欠かさなかったりするらしい。
それらを語っている時の柚花の顔には、本当に楽しそうな笑みが浮かんでいて、心から部活を楽しんでいる様子が宮崎にも感じられた。