今年の夏もキミを想う…。
「柚花ちゃんは、てっきり文化系の部活に入ってるのかと思ってたけど。結構アクティブなんだね」
柚花が、恥ずかしそうに笑ってスケッチブックに視線を戻す。
絵の具の染み込んだ筆が、真っ白だった風景に色をつけていく。
「本当は、運動……苦手なんです。体育の成績も、昔から救いようがないくらい悪くて」
ポツリと呟いた声には、昔を懐かしんでいるような響きがあった。
「でも、一緒にスポーツができたら楽しいだろうなって思って……。そしたらもっと、一緒にいろんなことができるかなって」
“誰”とは口にしない。
けれど何となく予想はつくから、柚花が思い浮かべているであろう“その人”を、宮崎もまた頭に思い浮かべる。
彼女が兄のように慕い、また彼女の前ではいいお兄さんであろうと頑張っている、その人を。
「でもやっぱり、まだまだ下手くそで、練習試合でも勝ったことがないんです。けど……スポーツって、結構楽しいなって、思い始めたところなんです」
また宮崎の方を向いて、柚花がはにかむようにして笑う。
宮崎もまた笑顔を返して、一言「それはなにより」と言葉を添えた。