今年の夏もキミを想う…。
柚花のスケッチブックには、この村とはまるで違う、華やかな町の様子が描き出されている。
新しい家が立ち並び、夜遅くまで明かりが灯る店が多くある、そんな町の様子が。
ぼんやりとそれを眺めていた宮崎の耳に、カラカラと自転車の車輪が回る音が聞こえてきた。
振り返れば、和果子が自転車を押して山道をのぼり終えたところだった。
「これ、結構足にくる……」
「和果子だって十分軟弱じゃないか」
「うっさい」
近寄って自転車のカゴを覗き込めば、菓子パンや惣菜パンが入っていた。
「買ったのか?」
「家にあった。あと、来るとき宮崎のお母さんにばったり会って、ジュースもらった」
そう言って和果子がパンの袋をかき分けると、底に柚子サイダーと書かれたペットボトルの炭酸飲料が三本横たわっているのが見えた。
「これからも仲良くしてやってねって言われた」
「いいんだよ、その報告は」