今年の夏もキミを想う…。
そんな和果子に、先程から絵筆を動かしつつ、柚花が何度もチラチラと視線を送っている。
時折聞こえてくる楽しげな笑い声に、宮崎もまた何度かそちらに視線を送っていた。
視界の端に映る柚花の横顔は、何だか少しだけ寂しそうだった。
「柚花ちゃん」
何となく声をかければ、振り返った柚花が不思議そうに小首を傾げる。
呼びかけてしまった手前、何か話さなければと口を開いた時、また和果子の笑い声が聞こえた。
柚花の顔が、引き寄せられるようにそちらを向く。
その横顔は、やっぱり何だか寂しそうで、切なそうで、苦しそうだった。
「……なんで、わたしじゃないのかな。わたしの方が、ずっと近くにいるのに。昔から、近くにいたのに。でもきっと、そういうことじゃ、ないんですよね」
呟く声は、どこか独り言じみていて、宮崎はただ黙って耳を傾ける。
兄のように慕うのではない、それよりももっと大きな気持ちが、ずっと強い思いが……自分と、同じような気持ちが、柚花の中にも秘められていることを、宮崎は何となく感じた。
そして、柚花の視線の先にいる和果子を、和果子に向けられた高知の視線を、連鎖するように思い出して、切なくなった。