今年の夏もキミを想う…。
「伝えたい事があるのに、伝えるのが怖いのは、みんな一緒か……」
ポツリと、言葉がこぼれ落ちる。
その声に、柚花がそっと視線を移した。
「今のままでいいって、そう思って。でも今のままじゃ苦しいって、そんなことも思って。けどやっぱり、伝えるのは……怖いんだよな」
宮崎の頭の中には彼女の顔があって、柚花の中にはきっと高知の顔があって、和果子の中にもきっと、大切な誰かの顔がある。
通話を終えたらしい和果子が、腕を組んで険しい顔をして宮崎を睨みつける。
先ほどの楽しげな笑顔とは、正反対だ。
とりあえず携帯を回収して和果子に謝るため、宮崎は腰を浮かせる。
その時、柚花がはにかむように笑って口を開いた。
「日向さん……次の夏こそ、帰ってくるといいですね」
柚花のか細いその声が、高知の囁くような声と重なる。
何か返事を返そうかと宮崎が視線を向けた時には、既に柚花は色付けの作業に戻っていて、こちらを向いてはいなかった。
そしていつの間にか、目の前には和果子が立っている。