今年の夏もキミを想う…。
「終わったみたい」
「だな」
スケッチブックを脇に置いて、絵の具を片付け始めた柚花の元に、和果子が駆けて行ってしゃがみこむ。
「ねえ柚花ちゃん、もし良かったら、帰りに家に寄ってアイス食べていかない?」
「えっ、いいんですか……?」
「もちろん。あっ、これすごいね。やっぱり柚花ちゃんは絵がうまい」
「い、いえ……そんな」
照れたように笑う柚花と、すごい、すごいとはしゃぐ和果子を、宮崎は離れたところからぼんやりと見つめる。
ポケットの中で、何度か携帯が震えた。
きっと高知からの鬼メールが始まったのだろう。
げんなりした気持ちでため息をつくと、またザーッと風が吹いて、柚花のスケッチブックが僅かにはためいた。
そこには、優しい色彩で彩られた町の風景が、確かな画力でもって描き出されていた。