今年の夏もキミを想う…。
逃げるように部屋を出て、廊下を早足で進んで台所についた和果子は、壁にぺたりと背中をつけてずりずり下がると、膝を抱えるようにして床に座り込む。
こみ上げてきた嗚咽を飲み込んで唇を噛み締めると、立てた膝に顔を埋める。
それでも抑えきれなかった涙が瞳に盛り上がってくると、腕のあたりをさわりと柔らかいものが撫でた。
驚いて顔を上げれば、いつの間にか隣に若様が座っている。
ふさふさした毛皮が触れるほど近くに寄り添って、つぶらな瞳で和果子を見上げ、その頬をペロリと舐めた。
「わかさまぁ……」
縋り付くように腕を回して、昔に比べてだいぶやせ細ったその体を抱きしめる。
こぼすまいと気を張っていた涙が、堰を切って頬を伝った。
「あのバカが…あのバカがあぁ……」
声を抑えてぐしぐしと鼻をすする和果子に、若様が慰めるように顔をすり寄せる。
そうしてしばらく、和果子の涙が収まるまで、一人と一匹は静かに寄り添い合っていた。
***