今年の夏もキミを想う…。


「えっと、確か……この道を左、いや……右だったかな」


いつも意気揚々と道案内をしてくれた彼女のいない、初めてひとりで向かう桜のブランコに、宮崎はすっかり道に迷ってしまっていた。


「あれ……でも、しばらく真っ直ぐだったような気も……。んーでも、あっちの景色の方に見覚えがあるような……。いや、どこも景色は一緒か」


目の前では、道が三つに分かれている。

正確には、道と呼べそうなのは左右の二本きりで、直進は極端に道幅が狭く、車では絶対に通れないようになっている。

おまけに、草がぼうぼうで長く人が通った痕跡がない。

道を聞こうにも、見渡す限りの田んぼに畑、人の姿はどこにも見当たらない。

遠くの方に微かに動いている点が見えるが、遠すぎてきっと声は届かない。


「よしっ」


覚悟を決めた宮崎は、右、左と、同じような景色を何度か眺めたあと、ペダルに足を乗せて、真っ直ぐに自転車を進めた。
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