今年の夏もキミを想う…。

彼女に言わせれば、悲しい事も辛い事も、苦しくて泣きたくなるような事だって、みんな“人生の醍醐味”という言葉で片付いてしまうのだ。

そうやって時折、卓越した老人みたいな事を言いながら、彼女は子供のように無邪気に生きることを楽しんでいる。

そんなキラキラとした彼女が隣にいるだけで、宮崎は、自分の人生もまた、一緒になってキラキラと輝いていくような気がしていた。


「あっ!こら、危なっ」


なんの前触れもなく自転車から飛び降りた彼女が、桜の大木に向かって走り出す。


「ほら、宮崎くんも早く!」


足場の悪い道を、彼女は時折よろけながら走っていく。

そして振り返って、笑顔で宮崎を手招いた。

五人の中で誰よりも年上とは思えないような、無邪気で子供っぽい笑顔を浮かべる彼女は、夏の日差しに照らされて、眩しい程に輝いていた……。
< 240 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop