今年の夏もキミを想う…。
直感も記憶も、結局全然あてにはならなくて、散々迷いに迷った末に、ようやくたどり着いたその場所で、宮崎はぼんやりと立ち尽くす。
自転車から下りてスタンドを立て、痛むお尻をさすって見つめる先には………切り株があった。
いつ誰が切ったのか、なぜ切らねばならなかったのか、そもそも本当にこの場所が、あのブランコを吊り下げていた桜の大木があった場所なのか、色んな疑問がぐるぐると頭の中をめぐって、宮崎は声もなくその場に立ち尽くす。
彼女が見つけた素敵なものは、いつの間にかなくなってしまっていたのだ。
「あいつ……残念がるだろうな」
まあるく残された切り株は、かつてそこに立派な木が生えていた事を教えてくれる。
宮崎は近づいて膝を折り、そっと断面に手を触れた。
日の光が燦々と降り注いだ断面は、ほのかに温かい。
まるで生きているようなその温もりに、そっと目を閉じて浸る。
どこかでセミが忙しなく鳴き、生えるに任せた雑草を、風が緩やかに撫でて通り過ぎる。
宮崎は目を開けて、何もない空間を見上げた。
頭の上からサワサワと降り注いでいた葉擦れの音、それが今は聞こえないことが、何だか無性に寂しかった。