今年の夏もキミを想う…。
「言いだしっぺがそれでいいのかよ」
「いいのー!」
空に向かって蹴り上げた彼女の足から、勢い余ってサンダルがすっぱ抜け、宙を舞う。
「何やってんだよ……」
綺麗に弧を描きながら飛んでいったサンダルを、宮崎はため息混じりに追いかける。
不意に、後ろから彼女の楽しそうな声が聞こえた。
「ねえ、宮崎くん!来年も、再来年も、その次の年も、ずっとずっと、こうして一緒に楽しい夏を過ごせたらいいね」
振り返って見えた、眩しい程のその笑顔に、宮崎の心臓がドクンと音を立てる。
吹き付ける風が、火照った頬を撫でていく。
彼女の言う“一緒に”は、きっと“二人で一緒に”ではない。
そんなことは言われずともわかりきっているのに、それでも自分にだけ向けられたその言葉が、今はどうしようもなく嬉しかった。
地面に転がったサンダルに手を伸ばすと、彼女が遠くから名前を呼ぶ。
「どっちだった、晴れだった?雨だった?」
サンダルで天気予報を占うなんて小学生か……と呆れながら、宮崎は目の前に転がっている、淡いオレンジ色をしたサンダルに視線を落とす。