今年の夏もキミを想う…。
それからはちっとも五人の予定が合わず、結局その年はタイムカプセルを埋めることができなかった。
そして次の年から今まで、彼女は一度も帰省していない。
宮崎もまた、今の今まですっかりと、タイムカプセルの事など忘れていた。
「言いだしっぺが帰ってこないんじゃな……」
ぼそりと呟いて、空を見上げる。
遮るもののない空が、青く澄んでどこまでも広がっている。
風に乗って流れる白い雲が、瞬きを数度繰り返すうちに形を変え、ゆったりと頭上を通り過ぎて行く。
徐ろに後ろのポケットから取り出した彼女からの手紙を、宮崎は何となしにぼんやりと見つめる。
その便箋には、季節はずれの桜が咲いていた。
所々に現れた彼女の癖をなぞるように、そっと手書きの文字に指を滑らせる。
それから、持ち替えた封筒に記された彼女の名前に視線を落とす。
携帯のメールにはない、手紙だからこその手書きの温かさがそこにはあった。