今年の夏もキミを想う…。
「これ以上和果子の勉強の邪魔するのも悪いしな。それに、早くこれを送ってやりたいし」
後半が本音であることは誰の目にも明らかだったが、和果子は悔しい気持ちを飲み込んで「そうだね」と返す。
三本の瓶が、歩くたびに宮崎の腕の中で危うげにカチャカチャと音を立てた。
「ダンボールか何か、探してこようか?」
「いや、いいよ。箱はカゴに入らないし。ゆっくり押して帰れば何とかなるだろ」
瓶を抱えて部屋を出た宮崎は、廊下で腹ばいになっていた若様を見つけて残念そうに微笑みかける。
「悪いな、両手が塞がってるから撫でられないわ。また近いうちに会おうな」
僅かに顔を上げた若様が、お別れの挨拶をするように一声鳴く。
宮崎の後を追って部屋を出た和果子は、代わりに優しくその頭を撫でた。
「あたし、ちょっとそこまで送ってくるから。留守番よろしくね」
靴を履いて、順番に外に出て行く二つの背中を、若様は静かに見送る。
引き戸がピッタリ閉じられると、しばらくして若様も、前足に顎を乗せてゆったりと目を閉じた。