今年の夏もキミを想う…。


「まあ……ないことはないけど」


パッと顔を上げた瞬間に、宮崎と正面から視線がぶつかって、和果子はなるべく自然体を装って視線を外す。


「別に、大したことじゃないんだけど。もし、良かったら……文化祭、見に来ないかなって思って」

「文化祭?」


中学生の頃、タイヤがパンクする度にお世話になった自転車屋の、明かりが落とされた店の前、宮崎は瓶を抑えて慎重に段差を乗り越える。


「でも、和果子のところは女子高だろ?」

「最終日に、一般公開もあるから。毎年、他校の男子が来てるのもよく見かけるし……」


考え込むように唇を引き結ぶ宮崎に、和果子は慌てて言葉を続ける。


「一人じゃ来づらいっていうなら、友達とか誘ってくれても全然いいし。そもそも、都合が悪いっていうなら……無理にとは、言わないし」


言葉が尻すぼみになる和果子にチラリと視線を送って、宮崎は再び考え込む。
< 27 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop