今年の夏もキミを想う…。
色とりどりの花が描かれた便箋をポケットに、宮崎は顔を上げる。
目の前にそびえ立つかつての学び舎に、不意に懐かしさがこみ上げた。
今日は、中学校の校舎を使って、卒業生と在校生の交流会が催される。
交流会などとは言ってもなんてことはない、卒業したら村を出る事になる後輩達と、夏休みを利用して帰郷している先輩達が、バーベキューをしながら楽しく語り合うだけのイベントだ。
毎回、帰郷している先輩の中から数人と、在校生の中から数人の有志を募ってバーベキューの準備をしているのだが、なぜか知らないうちにその有志の中に自分の名前が入っていた宮崎は、こうして朝から懐かしい学び舎に足を運んでいた。
「あっ、えっと……宮崎さん、ですか?」
感慨深げに校舎を見上げていた宮崎に、後ろからか細い声がかかる。
ビックリして慌てて振り返ると、後ろにいた人物も驚いたように僅かに後ずさった。
「あっ、えっと、すいません。わたし、柚花(ゆずか)です。覚えて……ますか?」
俯きがちにぽそぽそと話す彼女を、宮崎は失礼を承知でまじまじと見つめる。