今年の夏もキミを想う…。

相変わらず荒く息を吐きだしてかなり暑そうだが、撫でられるのは嬉しいらしく、尻尾がゆさゆさと左右に揺れている。

対する和果子は、ムスっとしてかなりご機嫌斜め。


「若様に挨拶する前に、まずあたしに挨拶しなさいよ。久しぶりに会ったんだから、何か一言くらい言う事あるでしょ!」


小、中と同じ学校に通っていた二人は、中学までしかない小さなこの村から、高校に進学する為に町へと出た。

隣町にある寮付きの高校に進学した宮崎と、更にその二つ隣にある女子高に通う為、家族で村を出た和果子は、夏休みを利用したこの帰郷が、かなり久しぶりの再会だった。

それなのに、散歩中の若様御一行に偶然鉢合わせた宮崎は、和果子への挨拶もそこそこに、地面に膝をついてだいぶ肉の落ちた若様の体を撫で回していた。


「よっ」


あまりにも和果子がうるさいので、若様を撫でる合間に片手を上げる。
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