今年の夏もキミを想う…。
久しぶりに足を踏み入れた校舎には、“廊下は走るな!”や“挨拶は一日の始まり”と書かれた色あせた紙が貼られてあり、それもまた宮崎が通っていた頃と変わりなく、また懐かしさがこみ上げる。
廊下の壁に貼られた展示物を眺めながら歩いていると、前を歩いていた柚花が突き当たりを右に曲がった。
宮崎もあとに続くと、ズラッと並んだ一年生の教室が視界に広がる。
記憶が確かなら、この廊下を突き当りまで行けば家庭科室がある。
特に会話もないまま、宮崎は無言で進んでいく柚花のあとをついて行った。
静かな廊下に、スリッパの立てる音が大きく響く。
視線を上げてみれば、天井から吊り下がる“一年一組”と書かれたプレートが目に入った。
各クラスのプレートを順番に眺めながら歩いていると、あっという間に突き当りの家庭科室に行き当たる。
ドアが閉まっていても、中からは賑やかな笑い声や楽しげな話し声が漏れ聞こえていた。
柚花が教室のドアに手をかけると、ガラガラっと引き開けられたドアの向こうで、音に反応したいくつかの顔がこちらを向く。