今年の夏もキミを想う…。
「あっ、やっと来た!遅いぞー、宮崎」
そのうちのひとつが、包丁を持ったままの姿で走り寄ってきた。
それも、中々のスピードで。
「ちょっ!?高知先輩、包丁持って走ってこないでください!!」
野菜でも切っている途中だったのか、エプロンに三角巾までつけた姿で、高知は宮崎の静止の声など気にも止めず、目の前まで迫ってくる。
包丁を振り上げて駆けてくるその姿は、まるでなまはげか、やまんばのようで、身の危険を感じて僅かに後ずさった宮崎の脇から、何事かと柚花がおずおずと顔を覗かせる。
途端、高知の動きが不自然な程にピタリと止まった。
「ゆ、ゆずちゃん……!」
先程まで宮崎への不満につり上がっていた目は、途端にキリリっと引き締められ、振り上げていた包丁はサッと後ろ手に隠される。
何が起こったのかとキョトンとする宮崎の脇から、柚花が室内に体を滑り込ませて、ぺこりと頭を下げた。