今年の夏もキミを想う…。
間章 柚花~いつも隣にいてくれたあの人が~
物心ついた頃から、あの人の事が好きだった。
けれどあの人にとってのわたしは、今も昔も変わらず、妹のような存在でしかない。
家族のように思われていることが嬉しくて、でも嬉しい半面、苦しくもあった。
近すぎたが故に、あの人はわたしの事を、恋愛対象としては見てくれない。
一人の女の子として、異性として、わたしを見てくれることは決してない。
家がお隣で、家族ぐるみで仲が良くて、小さい時からいつも一緒で……。
こんなに近くにいるのに、なぜわたしを見てはくれないのか、近すぎるから、わたしではダメなのか。
わたしではない誰かを、愛おしそうに見つめるその視線の先。
あの人の視線が向かう先を探ろうとして、いつも怖くて途中でやめる。
わたしがあの人を想うのと同じように。
あの人は、わたしではない誰かを想っている。
わかっている、わかっていたからこそ……気がつかないフリをしていた。
気がついてしまったらきっと、今よりもっと苦しくなってしまうから。