俺様ドクターに捕獲されました


もう夜の七時近くなるというのに、まだ明るさを残した空を見上げる。だいぶ陽が長くなり、夏の気配をすぐそこまで感じる今日この頃だ。


仲良さそうに前を並んで歩く背中を眺めながら、そっとため息をつく。


病院を出てから、もう何度ため息をついただろう。


あれから私は、誘われた飲み会に参加することにして幹事さんだという誘ってくれた井坂さんと、その彼女の飯嶋さんと一緒に彼に黙って病院を出た。


一応、用事があるので先に帰るというメールは送ってあるし、あっちにだってあの女医さんと仲よくしてるんだから私だって交友を広めても……。


「天野さん、大丈夫ですか?」

「へ!?」


突然、声をかけられてハッと前を見ると、井坂さんが心配そうな顔で私を振り返っていた。


やばい、ため息聞こえちゃったかな。ごまかそうと口を開こうとすると、井坂さんは私の鞄を指差した。


「さっきから、携帯鳴ってません?」


え、携帯……?


そう言われて意識を携帯の入った鞄に向ければ、たしかに中からブーブーという振動音が聞こえる。


「本当だ。全然、気づかなかった」


鞄を探って携帯の液晶を見ると、彼の名前が表示されている。すぐに着信は切れたが、そのあとに表示された不在着信の件数を見て思わず目を見開く。


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