俺様ドクターに捕獲されました
「……宇佐美先生?」
その声にハッとする。不愉快そうに顔をしかめた菊池先生にビクッとすると、彼は初めて彼女に気がついたような顔で振り返った。
「ああ、菊池先生。すみませんが、先に行っててもらえますか。彼女と相談したいことがあるので」
ニコッと微笑んだ彼の言葉に、菊池先生は渋々といった様子でうなずいて離れていく。その背中を見送りながらため息をついていた彼が、満面の笑顔で私を見下ろした。
「りい、妬いた? さっき、そういう顔してたろ」
「なっ! ……うん。ちょっと、おもしろくなかった」
素直に答えると、ニヤニヤ顔で私を見ていた彼が、真顔になって目を逸らす。
「くそっ、かわいい。聞くんじゃなかった。ここじゃ、なにもできない」
「な、なにもしなくていい! 優ちゃんこそ、こないだまですごく冷たかったのにどうしたの?」
「あれは……仕方ないだろ。顔真っ赤にしてがんばってるりいがかわいくて、じっと見てるとなでくりまわしてやりたくなるんだよ。だけど、りいが近づくなって言うから……」
恥ずかしそうにする彼に、私も赤くなる。そういう理由だったんだ。冷たい態度の理由がわかって、モヤモヤしていたものがひとつなくなる。
「でも、なんであの人としょっちゅう一緒にいるの?」
「勝手についてくるんだよ。うっとうしいけどな、医者不足だからそう無下にもできない。でも、もう少しでなんとかできると思うから。我慢できるか?」