俺様ドクターに捕獲されました
からかうように頭をグシャグシャとなでられて、ムウッと唇を尖らせる。やっぱり、触り方に色気がない。なんか、下僕からペットくらいにしか昇格していない気がする。
「で、できるよ。……でも、あんまりくっつかないでほしい」
「りい……。あー、もう、かわいいな。頼まれてもくっつかないから安心しろ。じゃ、おばちゃんのところに行くか。ふたりで報告に行くって言ったもんな」
「う、うん。でも、優ちゃん仕事大丈夫?」
「少しならな。りいは?」
「今日はもうおばちゃんで終わりだから大丈夫」
「じゃあ、一緒に行こう。……おばちゃんな、具合、相当よくないんだ。腹水が溜まってきているし、いつどうなってもおかしくない。あと一月、もつかもたないかっていう状態だ」
その言葉に、ズンと気持ちが重くなった。わかってはいたが、いざそのときが近くなっていると知るとどうしようもなく気持ちが沈む。
でも、決めたんだ。どんなときでも、彼の隣にいるって。
「行こうか、おばちゃんのところ」
だから、私は私にできることをしよう。その瞬間に、後悔しないようにーー。
* * *
「柴田さん、入っても大丈夫?」
トントン、とノックした彼が、病室の中に声をかける。どうぞ、という返答を聞いてから、私たちは病室に入った。