俺様ドクターに捕獲されました
彼の頭を引き寄せて、胸に抱く。昔、彼が私にしてくれたように、髪と背中をなでた。
いつもこうして、ひとりで泣いていたのだろうか。おばちゃんの言う通りだ。なんて不器用で、優しい人。
愛おしさが募って、胸の奥が疼く。切なくて、苦くて、甘くて。
ああ、好きだ。この人が、好き。
これからも、一番そばで彼を見つめて、支えていきたい。自然とそんな気持ちが湧き上がって、彼の背中にまわした手に力がこもる。
「おばちゃんめ……。でも、りいにこんな情けないところ、見られたくなかった」
「むしろ、私にしか見せないでほしいけどな。優ちゃんの涙は、私が拭いてあげるから」
ハッとしたように顔をあげた彼の額にキスをする。いつも彼がしてくれるみたいに、瞼に、頬に……何度もキスをする。
愛おしくて、たまらない。
この気持ちが少しでも伝わればいい。彼もいつも、そんな気持ちで私にキスをしてくれているのだろうか。
そんなことを思いながら、彼の濡れた瞼にキスをすると、彼がふっと小さく笑う気配がした。
「……りい、いい女になったな」
「そうかな。まあ、優ちゃんの隣にいるんだから、がんばらないとね」
「悪いな。絶世のいい男なもんで」
いつもの調子で笑いながら私を抱きしめ返した彼が、お返しとばかりに顔中にキスをする。それから、軽く唇にキスをした。
「おばちゃんの言う通りだな。俺は、りいが思うほど強くない。だから、これから先も俺の隣にいてくれ」
「うん、いるよ。ずっといる。だから、これからは私のところに帰ってきてから泣いてね」