俺様ドクターに捕獲されました
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おばちゃんとの別れから、三週間が経った。私はある決断をして休憩室でサロンのオーナーである佳乃さんと向き合っていた。
「里衣子ちゃん、宇佐美くんとお付き合いしてるのよね? 順調?」
彼と交際を始めたことを私からは話していなかったが、彼から聞いていたのだろう。満面の笑みを浮かべた佳乃さんは、その報告だと思っているらしい。
「ええ、まあ。あの……忙しい人なので生活はすれ違いですが」
このところ彼はすごく忙しそうで、夜にいないことも多い。帰ってくるのは朝方に近い深夜で、おばちゃんのことがある前から休んでいないから、もう四週間以上働き通した。
トリートメントをして癒してあげたいが、ゆっくり会話をしている時間もないのだ。本当に身体を壊さないか心配になるけれど、いつも大丈夫だとしか言ってくれない。
佳乃さんは、彼の今の状況を知っているのか、心配そうに眉尻を下げた。
「宇佐美くんも、大変よね。いくら跡継ぎとはいえ、ドクター不足に、経営のことまで抱えて駆け回ってるんでしょ? 今は病院も潰れる時代だものね」
佳乃さんまで、そのことを知ってるんだ。だけど、私は彼からなにも聞かされていない。私が高台東病院の経営が傾きつつあるという話を聞いたのは、莉乃からだ。