俺様ドクターに捕獲されました
「きゃー!! じゃあ、宇佐美くんがずっと好きだった子って里衣子ちゃんなの!? やだやだ! 十年振りに再会って……すごく運命的! ドラマみたい! そういうの大好き!」
佳乃さんは、ひどく興奮した様子でキャーキャー騒ぎ出す。それから、根掘り葉掘りいろいろなことを聞かれ、私は赤面しっぱなしだ。
しばらくして、話がかなり脱線していることに気がついてハッとする。
違う、違う。私が佳乃さんに話したかったのはこんなことじゃない。
「あの、佳乃さん。それで、ご相談があります。まだ彼には話していないのですが……」
当初の目的を果たそうと、私は興奮冷めやらぬ様子の佳乃さんに姿勢を正して向き直った。
「実はですね……」
* * *
佳乃さんへの相談を終え、マンションに帰った私はいつものルーティーンを終えて夕食を作り始めた。どんなに帰宅が遅くなろうとも、彼は私の作った夕飯を食べる。
疲れてるだろうから、あんまり胃に負担にならないものがいいかな。今日は暑いし、うどんに茹でた豚肉と大根おろしを乗せて、疲労回復効果のある梅干しをそえよう。
男の人にはこれだけだと物足りないかもしれないから、あり合わせのもので海苔巻きを作ろう。
献立を決めて夕飯を作り終え、時計を見る。簡単なものだったからか、思っていたより早く作り終わってしまった。