俺様ドクターに捕獲されました


それも含めて、佳乃さんに話したのだが、一番に話したかった相手とはなかなかゆっくり話すこともままならずにいる。


「今日も遅いのかなぁ……。せっかく恋人になったのに、デートもしてない」


つい、口からそんな本音が漏れる。忙しいことはわかっているが、少しは恋人らしいことがしたい。


ずっと恋愛に縁がなかった私には、“デート”というものに人並ならぬ強い憧れがあるのだ。


でも、休みもなく夜中まで働いている彼にそんなわがままを言えるはずもない。言えば無理をしてでも叶えてくれる気がするから、余計にだ。


「せめて、ゆっくり話がしたいな」


はあ、とため息をつきながら、立ち上がる。バスタオルで頭と身体を拭いていると、玄関のほうから物音がした。


それから、足音がバスルームの前を通り過ぎてリビングのドアが開く音がする。


え、もしかして、彼が帰ってきた?


急いでバスタオルを身体に巻くと、遠くから私の名前を呼ぶ彼の声が聞こえる。返事をしなければと、私がバスルームから顔を出したのと、彼がリビングのドアから出てきたのは同時だった。


「りい、風呂にいたのか」


「お、おかえりなさい。うん、ごめん。連絡くれた?」


「ああ、返信がないからどうしたのかと思った。ただいま、りい」


ニコッと微笑んだ彼がぎゅうっと私に抱きついてくる。そのまま壁に押しつけられて、唇を塞がれた。

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