俺様ドクターに捕獲されました
「んっ、優ちゃん、服濡れちゃう」
「別にいい。ちゃんとキスするの、久しぶりだろ」
たしかに、久しぶりだ。彼の病院に行く日は顔を合わせているけれど、最近はその日さえ会議があるとかで一緒に帰宅できていない。
だからまだ、彼のする深いキスに慣れなくて、うまく応えることができない。すぐ音をあげる私に、彼はクスリと小さく笑みをこぼした。
「全然、まだ足らないんだけど」
「だって……優ちゃんみたいに慣れてな……んっ」
「……俺だって慣れてねぇよ。りいとしかキスしたことないからな。経験値は同じだろ」
嘘だ、そんなわけない。そう言おうとした言葉は、彼の唇に飲み込まれる。彼の言葉を疑いつつ、本当にそうだったらいいのにと思いながら必死に彼のキスに応える。
「はあ、癒される。俺もこのまま風呂入るわ。りいも一緒に入ろ」
「え、私……入ったんだけど」
「別にもう一回入ったっていいだろ。俺、三時間後にはまた出なきゃいけないんだよ」
「え! また仕事に行くの?」
「ああ、ちょっと今立て込んでてな。で? りいは俺とくっついていたいって思わない?」
自信に満ちた笑顔で顔を覗き込まれて、ぐっと言葉に詰まる。しっかりとバスタオルを身体に巻き直して、無言で湯船に浸かった私に、彼は満足気に笑った。