俺様ドクターに捕獲されました
「でも今、結果も出てきてるから、週一じゃ足りなくなってきてるの。それに……病院の経営、大変なんだよね? 少しでも優ちゃんの助けになれたら……」
そう口にした瞬間、彼の表情が一変した。険しい顔で睨むように私を見つめてくる彼にビクリと身体が強張る。
「誰に聞いたか知らないけど、そんなことはりいが心配することじゃない。経営のことはりいに関係ないだろう。今後、一切口を出すな」
厳しい口調で告げられた言葉に、大きなショックを受けて視線が揺れる。関係ないって……ひどい。
隣にいてくれって言ったくせに、どうしてそんな突き放すようなことを言うの? 支えたいって思う私の気持ちは迷惑? 私はそんなに頼りない?
視線をさ迷わせたまま、なにも言えなくなった私を見て、彼がため息をつく。
「……悪い。ちょっと言い方がきつかったな。でも、りいが心配することなんてなにもないから。ほら、もうすぐ行かなきゃいけないから、俺のこと癒して。身体、見ないから抱きしめさせてくれ」
暗に手をわずらわせるなと言われている気がして、いつもなら服を着させてと駄々をこねるところを素直に彼の背中に手を回す。
「いい子。素肌で触れ合うと気持ちいいな。りいが不安に思うことなんてなにもないから。病院に行く日を増やしたいっていうのも、考えとく。だから、とりあえず保留な。お前の気持ちは、ちゃんとわかってるから」
抱きしめてくれる彼の胸に頬を寄せながら、小さくうなずく。
だけど、わかってない。彼は私の気持ちなんて、全然わかってない。
私はただ、彼が今置かれている状況を知りたかっただけ。ただ、彼の力になりたかっただけ。
でもそれは、私の自己満足にすぎないの? 本当は私の支えなんて、必要としてないんじゃないの?
グルグルと渦巻く不安と苦しさを抱えながら、キスを求める彼に応える。彼の唇が、今日はいつもよりずっと冷たく感じられた。