俺様ドクターに捕獲されました
この人、なにを言っているの? 別れろ? 慰謝料? 新しい相手?
バカにするにも程がある。私は、彼が医者だから好きになったわけじゃない。
いつもはきつい目が、私を見つめるときは優しくなるところが好き。私を包む温かい腕も、いつも頭をグシャグシャとなでる大きな手が好き。
俺様で、暴君で、独占欲が強くて。だけど、私のことを誰よりも好きでいてくれる。私は彼の、不器用な優しさが好きだ。
昔よりずっとずっと、今の彼のことが好きだ。
「……別れません」
「は?」
私の言葉が意外だったのか、彼女は信じられないという顔で私のことを見つめている。そんな彼女の顔を、しっかりと見据えて拳を握った。
「私からは、別れません。彼が望む限りは、ずっと彼のそばにいます。それに、別れるかどうかは、私と彼が決めることです。あなたには関係ありません」
「なっ! あなた、この病院がどうなってもいいというの?」
「それは……」
そんなわけがない。小さい頃からなにかと通っていた場所だ。彼との思い出もたくさんある。言い淀んだ私に、勢いづいた彼女が再び勝気な笑みを浮かべる。
「彼のことを思うなら、身を引くべきだとは思わない? 彼が本当に好きなら、そうするべきだわ」
彼女の言葉に、心が揺れる。でも、決めたんだ。この先なにがあっても、彼のそばにいるって。