俺様ドクターに捕獲されました
それから、どのくらい経ったのか。額に触れる優しい手に気づいて、目を開ける。どうやら、少し眠ってしまったみたいだ。
「りい、大丈夫か?」
「……優ちゃん?」
帰ってきたばかりなのか、シャツにジャケットを着たままの彼を呆然と見つめる。心配そうな顔をした彼が、私の額に触れた。
それだけで、さっきまで感じていた孤独感が嘘のようになくなって、すごく安心する。
「熱はないか。具合、悪いんだってな。お前、なんで俺に連絡しないんだ。こういうときのための彼氏だろ? しかも、医者だぞ。有効活用しろよ」
どうして私が具合が悪いことを知っているんだろう。そう思って、ハッとする。
しまった、佳乃さんか。あそこがツーカーなのをすっかり忘れていた。
眉間にシワを寄せた彼に、自分だって私には頼ってくれないくせにという反抗的な気持ちが湧き上がるが、それをこらえて笑顔を作る。
前のように突き放されたら、きっと今は耐えられない。それに久しぶりに会えたのに、険悪なムードになりたくなかった。
「だって、忙しいと思ったから。薬も飲んだし、平気だよ」
「こんな青白い顔で、なに言ってんだ。仰向けになって、膝たてろ。診察してやる」
「え、いいよ。大丈夫だから。最近、暑くなってきたし。多分、夏バテだよ」