俺様ドクターに捕獲されました
「それを診断するのが医者だ。いいから、言う通りにしろ」
聴診器を出した彼の勢いに押され、言われた通り仰向けになって膝をたてる。お腹を押したり、聴診器を当てる彼の顔はとても真剣だ。
「……吐いたりはしてないんだな? 水分は?」
「あんまり」
「点滴持ってくればよかった。病院行くか? 点滴したほうが楽になるぞ」
「ううん、大丈夫。水分、ちゃんと飲むから。それより優ちゃん、ぎゅってして」
泣きそうになりながら腕を伸ばした私を、彼は抱きかかえるようにして抱きしめてくれる。煙草の香りとぬくもりが、彼の存在をより強く感じさせてくれて我慢しきれずに涙がこぼれた。
「……りい、どうした。なんで泣いてる。なにかあったのか?」
「ううん、なにも。久しぶりに会えたから、うれしくて」
彼の背中に回した腕に力を込めると、彼はそれ以上に抱きしめ返してくれる。苦しいくらいなのに、今はそれが心地いい。
「……ごめんな、ずっと構ってやれなくて。寂しかったか?」
「うん、寂しかった」
即答すると、背中をなでていた彼の手がピタッと止まる。どうしたのかと顔を見上げると、口元を隠した彼が明後日の方向を向いていた。