俺様ドクターに捕獲されました
この時間が終わってしまうことを悟り、気持ちが沈む。仕方がないことだとわかっているけれど、どうしても悲しい気持ちになってしまう。
さっきまで寝室を満たしていた濃密な空気が、嘘のように冷えていくのを感じた。
「……宇佐美です。あー……、はいはい、わかってますよ、行きます」
ため息をつきながら電話を切った彼が、困ったように眉尻を下げて私の頬をなでる。
「そんな顔するなよ。くそっ、行きたくない。ごめんな、りい。今度、思いっきり甘やかしてやるから、許せ」
「……うん。お仕事だから、仕方ないね。優ちゃんこそ、身体大丈夫?」
「ああ。俺は、頑丈だからな。デート、楽しみにしてろよ」
「うん、楽しみにしてる」
柔らかい笑みを浮かべた彼が、唇にチュッと音をたてて触れるだけのキスを落とす。それから耳元に唇を寄せた。
「続きは、そのときな」
彼の吐息で揺れた髪が肌をくすぐって、ピクッと身体が揺れる。それから、彼の言葉の意味を理解して真っ赤になった。
さっきまでそうされたいと思っていたのに、言葉にされるとすごく照れる。
「じゃあ、行ってくるな。なにかあったらすぐに連絡しろ。くれぐれも無理をするなよ」
「うん、優ちゃんも。いってらっしゃい」
「いってきます。……あー、危なかった。しかも病人相手に。もう少しだから、耐えろ、俺」
ブツブツと独り言を言いながら寝室を出て行く彼の姿を見送って、はあっと息を吐いてベッドに沈み込む。