俺様ドクターに捕獲されました
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『ぶはは! やべ、ありえねぇ。お前、それはもう運命としか考えられないな』
私の話をすべて聞き終えた兄は、他人事のように爆笑した。
「笑い事じゃないよ。一生のお願いだから、助けてください」
『あー……、それは無理だな』
私の必死のお願いを、兄は無情にも却下した。予想外の返答に、私は目を見開いて固まった。
「な、なんで……? 十年前は助けてくれたのに」
『だって、お前が一生のお願いだって頼むからさ。そんなに逃げたいなら、と思って助けてやったけどな。それに、すんでところで獲物に逃げられた優がどんな反応するのかも興味あったし。あのときのあいつの顔、写真に撮っとくべきだったな』
くくっと低い声で笑う兄に、ゾッとする。そうだった、この人はそういう人だった。人が苦しんでいる様を見て喜ぶ、生粋のサディストだ。
『里衣子、一生のお願いっていうのはね、そんなに軽々しいものじゃないんだよ。あのとき使ってるんだから、今度は助けてあげない。優とも、そういう約束だしな。逃げたいなら、自力でなんとかしな。まあ、無理だろうけど。ああ、現場で見れないのが残念。俺、まだ仕事中だから。じゃあな、里衣子。俺せいぜいがんばれよ』
「あ、ちょっ……」
ケラケラと楽しそうに笑い声とともに、ブチリと通話が切られた。絶望的な気持ちになりながらも、すがるような気持ちでもう一度電話をかける。