俺様ドクターに捕獲されました
「え、あの……どうして服を脱いでるんですか?」
「マッサージ、全身してくれるんじゃないの?」
「……いつも足だけだとお伺いしていますが」
「ああ、例え知り合いの嫁さんでも、好きでもない女に肌に触れてほしくないからな。でも、天野サンになら、全身やってもらってもいいと思って」
ニヤッと笑って顔を近づけてきた彼から、慌てて距離をとる。内心の怯えが伝わったのか、彼はククッと低い笑い声を漏らした。
「そんなに警戒しなくても、セラピストさんには手、出さねぇよ。セラピストさんには、な」
すっと目を細めた彼の視線に、ゾクリと肌が粟立つ。さっきから、顔は笑っていても目が笑っていない。
怖い、怖すぎる。内心は、きっと怒りのあまり嵐が巻き起こっているに違いない。
「も、申し訳ありませんが、全身できるほどのオイルを準備しておりません」
嘘だ。オイルの量は多めに入っていたから全身やっても大丈夫。準備ができていないのは、私の心だ。
彼に触れたら、私の心の内が全部見透かされてしまいそうで怖い。
「なんだ、残念。じゃ、よろしくね」
さして残念そうでもなくベッドに横になった彼が、ニヤニヤしながら私を見る。なんか、すごくバカにされている感じがする。嫌な感じだ。
しかし、いつもと勝手が違うからこれではどうにも施術がやりにくい。