俺様ドクターに捕獲されました


「だから、手出さないでやっただろ。マッサージが終わったんだから、もうお前はセラピストじゃないし、俺は客じゃないよな? 次、宇佐美様って呼んだら本気で泣かすぞ」


もう、泣いてます。そう意志を込めた私の視線に気づいたのか、ふっと笑った彼は優しい仕草で私の目尻に浮かんだ涙を指で拭った。


その行動にドキッとするけれど、それにしても寝たふりをしていたなんてひどい。セラピストとしての自信が、ちょっぴり揺らいでしまう。


「ひどい……、寝たふりしてたんだ」


「まさか、本気で寝てたよ。お前の手、気持ちよすぎ。中野の嫁なんかよりずっとうまい。かなり疲れてたし、あのまま寝落ちしてもおかしくなかったんだけどな。神様は、優しい。ふっと、目が覚めたんだよな」


それを聞いて、軽く絶望する。神様、私には優しくないです。ガックリとうなだれる私の顎を、彼が持ち上げる。


「もう、これは運命だよな? だから、あきらめろ」


ものすごくうれしそうに笑って私を抱え込んだ彼は、そう言ってキスを再開した。


どうにかしなければと思うのに、状況はどんどんまずい方向に向かっていく。気づけばベッドに押し倒されて、彼の身体が私に覆いかぶさっていた。


い、いつの間に……。ていうか、これ、まずくない?


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