俺様ドクターに捕獲されました
貞操の危機を感じた私は、慌てて覆いかぶさる身体を腕で押し返す。力いっぱい硬い胸板を押すが、ビクともしてくれない。
「ひ、髭が痛いから。お肌に傷がついちゃうんで、やめてください」
必死に見つけた理由は、なんとも威力のないものだった。当然、そんなものが効くわけがない。
「我慢しろ。忙しくて髭剃る暇もなかったんだ。逃げるなよ、りい。早く終わらせたいなら、俺を満足させられるように努力するんだな」
あ、余計まずいことになった。わざと髭があたるようにしながら、キスはさらに深く、激しくなっていく。
それ以降は反論する隙も与えてもらえず、私の思考は彼の嵐のようなキスに飲み込まれていった。
* * *
「……ん、ん、ふっ」
どれくらい時間が経ったのか。時間の感覚がなくなるほどのキスを受け続けている私の身体は、もう大分前からぐったりとシーツに沈み込んでいる。
少し冷たかった彼の舌は、私の体温と混ざり合い同じくらい熱い。
「もう、やっ、助けて……」
こうやって白旗をあげるのは、何度目だろう。今まで散々無視されていたそれをようやく聞いてくれる気になったのか、彼が唇を離した。
それに安堵しながらも、一抹の寂しさを感じてしまうのはなぜなんだろうか。