俺様ドクターに捕獲されました


「……もの欲しそうな顔して、まだ足りないか?」


「……っ! ちがっ!」


図星を突かれて、恥ずかしさからかあっと顔が赤くなる。プイッと顔を背けると、ククッという低い笑い声が鼓膜を震わせた。


「顔、真っ赤だな。顔だけじゃなく、ここも」


ペロリと耳を舐められて、ビクリと身体が跳ねる。そんなところを自分以外の誰かに触られるのは初めてで、さらに顔が熱くなる。


「りい、俺以外の男にこういうことさせてないだろうな?」


「……っ」


そのまま首筋を唇で撫でられて、漏れそうになった声を必死に飲み込んだ。


「早く答えろ、りい」


「んっ、されてない……。優ちゃんとしか、したことない」


私のファーストキスは、十三歳のとき。飽きもせずに、キスを繰り返しているこの人に奪われた。


忘れもしない、中学一年生のバレンタイン。


例の乗り込み事件のあと、私の部屋で他の人のために作ったチョコをバリバリ食べる彼に、私は泣きながら文句を言った。


「ひどいよ、優ちゃん。なんでこんなことするの。一生懸命作ったのに」


「りい、お前……まだわかってないのか。本当に物覚えが悪いな」


ペロリと指についたチョコを舐めた彼が立ち上がり、私の腕を掴んで引き寄せた。真顔で私を見下ろす彼がいつもより大きく見えて、ビクッと身体が震える。

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