俺様ドクターに捕獲されました


おかげで、二十八歳にもなって、恋愛経験ゼロといううれしくない称号を手にしてしまっている。


「だろうな。尊とりいも、俺との約束をちゃんと守ってたみたいだな」

「約束?」

「そう。そこは、いい子だな。なあ、りい……なんで俺から逃げた?」


彼の手が服の上から私の脇腹をなぞり、白衣のファスナーに手をかけた。


「え、やっ! なにして……」

「なにって、副脱がせようとしてる。嫌なら、早く答えろよ。俺が気が長いほうじゃないのは、りいも知ってるだろ?」

必死にファスナーを下ろそうとする手を掴んで抵抗するが、散々キスされて力の入らない身体では敵うはずもない。


ジリジリと下に落ちていくそれに、泣きそうになる。


だけどーー。


「……言いたくない。絶対、言わない」


ふいっと顔を背けると、すぐに顎を掴まれて戻される。無表情に私を見下ろしていた彼が、ふっと口元を緩めた。


「……ふうん。そういう態度とるのか。あんなに教え込んでやったのに、忘れちまったみたいだなぁ」


凄みを感じるほど、綺麗に笑った彼の目がギラリと輝く。あまりの恐怖にブルブル震える私に、彼はぐっと顔を近づけた。

< 39 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop