俺様ドクターに捕獲されました
だからって、いくら幼なじみとはいえ、いきなり異性との同居を許す親がどこにいるのか。
「あきらめろ、りい。言っておくが、尊に助けを求めても無駄だぞ。そういう約束だからな。……っと、噂をすれば」
どうやら、兄から電話がかかってきたらしい。私には、その電話が最後の希望に思えた。
今までさんざん、私の恋愛に口を出してきた過保護な兄だ。相手が親友とはいえ、両親のように簡単に籠絡はされないはず。
なんとか、兄に直接助けを求められないか……。そう思いながら、私に馬乗りになったまま電話をとった彼のことを見上げる。
「もしもし。……ああ、携帯取り上げたからな。……さすがにそんなことしねぇよ。俺は、お前ほど鬼畜じゃないからな。だけど、今日から一緒に暮らす。ちゃんと、許可はとったからな。……お前こそ、約束は守れよ。ああ、待って。今、代わる」
そう言って、彼が私に携帯電話を差し出してきた。
「尊が、りいと話したいって」
兄と直接話せないかと、チャンスをうかがっていた私は、あまりにもあっけなくきたそれに面食らった。
だが、これは最後の砦だ。なんとしてでも兄にこの絶体絶命のピンチを救って守らなければ、私に明るい未来はない。
「もしもし、お兄ちゃ……」
『あはははっ! 里衣子、お前……マジ、ウケる!』
決死の覚悟で携帯を手にした私の耳に聞こえてきたのは、無慈悲な兄の高らかな笑い声でした。