俺様ドクターに捕獲されました


『相手が優じゃなぁ。あいつ、俺と同じくらい、いい男なうえに一途だし。それに、お前が逃げたとき、約束したんだよな。もし、里衣子と偶然に再会したときは、もう邪魔しないって。だから、悪いな』


兄の言葉に絶望する私に、彼は勝ち誇った笑みを浮かべた。


「わかったか、りい。お前はもう、逃げられないんだよ。あきらめて俺のものになれ。まあ、元々俺のだけどな」

「……っあ、ん。やだやだ、無理無理! お兄ちゃん、助けて」

『……優め、充分鬼畜だわ。なにがうれしくて親友と妹のベットシーンを聞かされなくちゃならねぇのよ。というわけで、切るわ。お前だって、優のこと嫌いじゃないだろ? なんせ、初恋の相手だもんな。いきなり丸飲みにはしないだろうから、安心しろ。とにかく俺は、お前のことは助けられない。じゃあ、そういうことで』


たしかに、この人は不本意なことに私の初恋の人だけど、何年前の話よ。そんなのとっくに終わってますから。


なにが、安心しろなのか具体的に説明してほしい。


「やっ、待っ……!」


私の助けを無視して、無情にも電話が切られる。ツー、ツーという虚しい電子音が聞こえるそれを、彼が取り上げた。

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