俺様ドクターに捕獲されました
3
「ただいまー」
鍵を玄関に置いて、そう声をかけて部屋に入る。誰もいないことはわかっているが、これはもう習慣だ。
真っ暗な部屋に電気をつけて、こもっている空気を入れ替えるために窓を開ける。
彼は、喫煙者だ。換気扇の下で煙草を吸うようにしているらしいが、それでも少し匂いはする。
精油で手作りしたルームスプレーをシュッシュと部屋に撒くと、初夏の夜風が、ふんわりとした爽やかな香りを届けてくれる。
それを胸いっぱいに吸い込んで、私は床に散らばっている服を集め始めた。仕事から帰ってきてからのこの流れは、私のルーティーンになりつつある。
彼と暮らし始めて、早二週間。
不安しかなかった彼との同居は、思いの外快適だ。というより、ひとり暮らしのときとなんら変わりがない。
同居を始めた次の日は、私も彼も仕事が休みで、その日は私の部屋に身の回りのものを取りに行き、ここでの生活に必要なものを買いに行った。
会計は全部彼がしてくれた。もちろん断ったが、聞いてくれそうもなかったので望まない同居の迷惑料としてもらっておくことにした。
だけど、これは本当にいらなかった。
彼は、私に本当に首輪をつけた。それが、今も私の胸元で輝いているダイヤモンドのついたネックレスだ。