俺様ドクターに捕獲されました
「……わかった。とりあえず、できる限りのことはやってみる」
「りいなら、そう言ってくれると思ってた。じゃあ、俺は寝る。やっぱり、りいの手は気持ちい……」
そう言うがいなや、彼はあっという間に眠りに落ちていってしまった。その気持ちのよさそうな寝顔を見つめながら、どうしようもない不安が心に広がっていくのを感じる。
「……病院、か」
勉強してきたことを実際に患者さんに実践できることは、きっと勉強になる。今後のセラピスト人生にもおおいに役立つはずだ。
またとないチャンス。なのに、私はそれが怖くてたまらない。
彼なら、きっとそんなことはないのだろう。本当に、弱虫な自分が嫌でたまらない。
いつも自信に満ち溢れている大きな背中にトリートメントをしながら、私は小さくため息をついた。