俺様ドクターに捕獲されました
「いやいや、もう年で毎日しんどいよ。さっさと優に継いでもらって早いとこ隠居したいんだけどね。里衣子ちゃんもやっと優のところに来てくれる気になったみたいだし、もう辞めちゃおっかな!」
相変わらず軽いな、おじさん。ケラケラと笑う姿はとても威厳なんて感じさせないが、これでも内視鏡手術のスペシャリストとして雑誌にも載るほど有名な名医だ。
「辞めちゃおっかな、じゃねぇよ。引退にはまだ早いだろ。キリキリ働け。言っておくが、今、俺が後を継いでも馬車馬のようにこき使ってやるからな。楽なんかさせねぇよ」
「うちの息子は厳しいねぇ。あ、里衣子ちゃん、この人たち、うちの偉い人。副院長、事務局長に、診療部長、総務部長に看護部長ね。ま、全然覚えなくてもいいけど。この子、天野里衣子ちゃん。優の将来のお嫁さんね」
「は!?」
お嫁さん!? このおじさんは、突然なにを言っているの。それに、なんでそんな偉い人たちが揃っているの?
唖然としている私を置いてけぼりに、お偉い様方は勝手に盛り上がっている。
「いや、かわいらしい人だ。若先生もついに身を固める気になったんですか。めでたいことですね」
「あらあら、うちの看護師が何人泣くか……。意地悪されるようなことがあったらすぐに言ってね」
「これで、高台東病院も安泰ですね」
やたらと期待のこもった目で見つめられて、笑顔が引きつる。あれ、私……仕事で来てるんだよね?
なに、この“お嫁さん”認定。