俺様ドクターに捕獲されました
「もう、いいだろ。じゃあ、りい連れて挨拶回り行ってくるわ」
「あら。先生、私が行きましょうか?」
「いや、俺が行きます。行くぞ、りい」
引いている私に気がついたのか。彼が私の腕を掴んで出口に向かって歩き出した。
そんな私たちをおじさんが、いやらしいニヤケ顔で見つめてくる。
「やっと念願が叶うから、離れたくなくて仕方ないんでしょ。小さい頃から、里衣子ちゃんを嫁にするって聞かなくて。半分、ストーカーみたいなもんですわ」
「あら、まあ」
「それは、それは……」
多数の生ぬるい目を向けられた彼が、バツが悪そうな顔でその人たちから隠すように私の肩に腕を回す。
「……親父、あとで覚えとけよ」
「怖いなー。あ、もう忘れた。そうだ、優、母さんも里衣子ちゃんに会いたがってたぞ」
「ああ。りいの実家にも寄るから、帰りに寄るよ」
ギロリとおじさんをひと睨みした彼に背中を押されて、院長室を出る。なんか、すでに疲れた。
「ねえ、優ちゃん。なんか変な話になってたけど」
「ああ、親父が先走ってるだけだから。気にすんな。とりあえず、ナースセンター行くか。他は、外来中だから夕方な。そのあと、担当してもらう患者のところに連れて行く」
「う、うん」
いや、気にするなってほうが無理でしょう。でも、仕事で来てるんだし今はとりあえずそっちだよね。