俺様ドクターに捕獲されました


顔を引きつらせた私に、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべた彼がぐっと顔を近づけてくる。


「そうだったな。で、なんでりいは俺から逃げ出したんだ?」

「……」


無言で顔を背けると、彼が耳に唇を寄せてささやいた。


「まだ言いたくない? なら、聞かないでおいてやろうか?」

「え……!」


思いがけない言葉に、彼を振り返ると目を細めた彼が唇が触れそうなほどの距離にいた。鼻先を触れ合わせた彼が、ふっと笑みをこぼす。


「なら、キスしろよ。お前からキスしたら、聞かないでおいてやるよ」

「……っ」


彼の言葉の意味を理解した途端、顔がすごい勢いで熱を持ち始める。もう何回もしたことのあるキスだけれど、私からしたことなんて一度もない。


「話したくないんだろ? ほら、早くしろ」


んっと、唇を突き出されて、躊躇しながらも唇を重ねる。恥ずかしくてたまらないが、私に拒否権なんてあるわけがない。


彼の性格を考えれば、どんな手を使ってでも吐かされてもおかしくない。だけど、そうしないのは、彼の優しさな気がした。


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