俺様ドクターに捕獲されました
「……へたくそ。俺のキスの仕方、忘れたのか」
「んっ」
すぐに唇を離してしまった私に、ふっと笑った彼が唇を塞いだ。啄むようなキスから、次第に深いものに変わっていくそれに堪えようのない声が漏れる。
「忘れたならもう一度覚えろよ、りい。俺の唇の体温、感触、形。全部覚えろ。お前が忘れないように、何度でもしてやる」
「優ちゃ……ん、ふっ」
「里衣子……」
ここで名前を呼ぶなんて、本当にずるい人。それだけで、私の心臓は簡単に速度を速める。
少し冷たい彼の唇が、熱を帯びていく。体温を分け合うようなキスに、胸の奥が甘く疼いた。
私と同じ体温になった、彼の唇が、私の手を包む大きな手のぬくもりが、とても心地いい。
なぜ、こんなキスをするのか、とか。なにを考えているの、とか。いろいろ聞きたいことはあるけれど、今はただ……そのぬくもりを感じていたい。
今だけ、今だけ……。
そう言い聞かせて、私は彼のキスに溺れていった。