俺様ドクターに捕獲されました
逆に夜間不眠や不穏のある患者さんは午後ケアをしている。こちらは、鎮静作用のある精油を使用して、どちらも濃度は通常より低く希釈している。
特に活躍している精油は、ラベンダーだ。
最もポピュラーで有名な精油といえるラベンダーは、百五十もの効能が認められている。
トリートメントに使うことはもちろん。ハンカチに数滴垂らして枕元に置いておくだけでも安眠効果が期待できる。
田村さんも、昼夜逆転している傾向があったが、最近はそれも改善してきている。
「じゃあ、準備してきますからね。リハビリの時間までに終わらせましょう」
そう声をかけてシーツを抱えて廊下に出る。私が担当している患者さんのシーツや寝衣交換、食事介助は私がやることにしている。
お昼に入るのは遅くなるが、食後一時間はトリートメントを避けた方がいいから都合がいいのだ。
これも、セラピストの分際で出しゃばりすぎだとか言われているけど、なにもしなければしないで言われるだろうから気にしないことにした。
彼の言う通り、私はセラピストとしての自分に誇りを持っているから、もう彼女たちに変な劣等感を持つのはやめることにしたのだ。
シーツを抱えてリネン室に向かっていると、廊下の向こうから彼が歩いてくるのが見えた。
その隣に、例の女医さん……菊池先生がいることに気づいてビクリと身体がすくむ。